
「辞めたい=弱い」――もし今、そう自分を責めながらこのページにたどり着いたなら、まず知っておいてほしいことがあります。看護師が辞めたいと感じることは、決して甘えでも逃げでもありません。
むしろ、心身が限界に近づいているときほど、人は「まだ我慢できるはず」「ここで投げ出したら負けだ」と考えてしまいます。これは性格の問題ではなく、筆者がこれまでに行ってきた看護師への個別ヒアリングでも、責任感が強く周囲を優先してきた人ほど繰り返し語っていた心理です。
看護の現場では、夜勤による生活リズムの崩れ、慢性的な人手不足、急変対応への緊張、患者や家族との感情労働、上下関係の厳しさなど、複数の負荷が同時に重なります。その中で「辞めたい」という感情が生まれるのは、弱さではなく、環境と負荷のミスマッチを知らせるサインであるケースが、筆者のヒアリングでも繰り返し確認されています。
実際に筆者がこれまでに行ってきた看護師への個別ヒアリング(延べ300名超)でも、「辞めたいと思った瞬間に、自分を責めてさらに追い込んでしまった」という声は繰り返し聞かれました。
特に多かったのは、「辞めたいと感じるほど、自分は看護師に向いていないのではないか」「もっと大変な人もいるのに」と考え、限界を無視し続けた結果、体調不良やメンタル不調で突然働けなくなってしまったケースです。
この記事では、「辞めたい」と感じた瞬間に起きている変化を感情論ではなく構造的に整理し、続ける・休む・異動・転職という選択肢を冷静に比較できる判断軸を提示します。結論を急がせることはしません。「今は決めなくていい」という前提で、後悔しにくい思考整理を一緒に進めていきましょう。
なお、「転職までは考えていないけれど、情報だけ整理したい」「電話が苦手で強く勧められるのは避けたい」という方は、電話が苦手でも“登録だけ”で相談スタイルを比較できる看護師向けの使い方のように、相談スタイルに特徴があるサービスの違いを知っておくと判断しやすくなります。
「辞めたい」と感じている状態で、無理に結論を出そうとすると判断を誤りやすくなります。この記事は「今すぐ辞めるかどうか」を決めるためのものではなく、状態を正確に把握するための整理記事です。
目次
「辞めたい」と感じたときに整理すべき現実的な判断軸

辞めたい気持ちが出ているとき、人はどうしても「辞めるか・辞めないか」という二択で考えてしまいがちです。しかし実際には、その間にいくつもの選択肢があります。重要なのは感情の強さではなく、環境を変えたときに回復する余地があるかどうかを見極めることです。
今の職場で負荷を下げる余地はあるか
まず確認したいのは、業務量・夜勤・人間関係といった負荷要因が調整可能かどうかです。例えば夜勤回数を減らす、固定チームを外れる、部署異動を相談するなど、環境を部分的に変えるだけで回復する人も、筆者のヒアリングでも実際に確認できています。一方で、慢性的な人手不足や管理職の理解不足が原因の場合、個人の努力で改善できる余地はほとんどありません。
実際に筆者がヒアリングしたケースの中には、「辞めるしかない」と思い詰めていたものの、夜勤回数の調整だけで状態が大きく改善した例もありました。
急性期病棟で月8回以上の夜勤を続けていた30代看護師は、体調不良と不眠が続き「もう限界」と感じていましたが、師長に相談し夜勤を月4回まで減らしたことで、数週間後には睡眠と食欲が回復しています。このケースでは、業務内容そのものよりも夜勤負荷が限界を超えていたことが原因でした。
一方で同じ病棟でも、夜勤を減らせない・相談自体ができない環境では、同様の調整が難しいのも事実です。負荷を下げる余地があるかどうかは「本人の頑張り」ではなく「職場の調整可能性」によって決まるという点は、判断の際に切り分けて考える必要があります。
休職・異動という選択肢は現実的か
「辞める前に休職した方がいいのでは」と考える人も多いですが、ここにも向き不向きがあります。休職は心身の回復には有効ですが、復職後に同じ環境へ戻る前提である以上、原因が解消されていなければ再発しやすいという側面があります。異動も同様で、病院全体の文化が合わない場合は部署を変えても根本解決にならないケースが少なくありません。
筆者がヒアリングした中には、休職後に復職したものの、結果的に再び体調を崩してしまったケースもあります。20代後半の看護師は、メンタル不調で3か月休職し一度は回復しましたが、復職後は同じ人員体制・同じ評価基準の職場に戻ることになり、数か月で再び強い不安を感じるようになりました。本人は「休んだことでリセットできると思っていた」と振り返っています。
このケースでは、休職自体が悪かったのではなく、原因となっていた環境が何も変わらないまま復職したことが再発につながっています。休職や異動は「時間を稼ぐ手段」として有効ですが、根本原因がどこにあるのかを整理しないまま選ぶと、同じ状態を繰り返すリスクがあります。
転職すると何が変わるのか
筆者がこれまでに行ってきた個別ヒアリング(転職経験者を含む)の中で多かったのは、「職場を変えた瞬間に、辞めたい気持ちが嘘のように軽くなった」という声です。これは意志の弱さではなく、環境が合っていなかっただけという典型例です。特に夜勤体制、教育方針、人間関係の距離感が変わると、同じ看護業務でも負担感は大きく異なります。
大きく改善した(72%)
少し改善した(18%)
変わらなかった(7%)
悪化した(3%)
※筆者が過去に行ったヒアリングのうち、転職経験がある看護師の回答を要約したもの
(厳密な統計ではなく傾向把握のための整理)
「辞めたい」と言い出せない看護師に共通する心理

辞めたい気持ちがあっても行動に移せない人には、いくつか共通点があります。最も多いのが「迷惑をかけてしまう」という思い込みです。実際には、退職者が出る前提で現場は回っていますが、責任感が強い人ほど自分一人で抱え込んでしまう傾向があります。
また、「評価が下がるのでは」「根性がないと思われるのでは」と想像し、退職を切り出した瞬間の空気を何度も頭の中で再生してしまう人も少なくありません。これは不安が強い状態で起きやすい反応で、判断力が低下しているサインでもあります。
70%
54%
39%
筆者がSNS上の投稿を定点的に確認する中でも、X(旧Twitter)やInstagramでは「辞めたいと思ってから実際に辞めるまで1年以上かかった」という投稿が複数見られました。多くの人が感情よりも周囲を優先し続けた結果、限界を超えてから動いています。
転職エージェントは使うべきか
本記事は比較・ランキング記事ではありませんが、補足として触れておきます。判断に迷っている段階で、情報整理のために相談するという使い方であれば、転職エージェントは有効です。実際に転職サービスの利用経験がある看護師へヒアリングを行ったところ、「登録したことで、辞めなくてもいい選択肢が見えた」という声も確認できました。
筆者が利用者ヒアリングと、複数エージェントの初動対応の聞き取りを通じて確認した限り、地方求人については対応スピードに差があり、登録直後に複数の選択肢を提示してくれる場合もあれば、連絡が遅いケースも存在します。重要なのは、今すぐ転職する前提で使わないことです。
よくある質問
辞めたいと思った時点で転職活動を始めるべきですか?
必ずしも始める必要はありません。判断に迷っている段階では、情報収集や相談だけに留めることで、選択肢を整理しやすくなります。
周囲に相談できない場合はどうすればいいですか?
職場以外の第三者に話すことで、感情と事実を切り分けやすくなります。匿名相談やエージェント相談を使う人も多くいます。
辞めたあと後悔する人はいませんか?
後悔がゼロとは言えませんが、ヒアリングでは「無理を続けたことへの後悔」の方が圧倒的に多く見られました。
辞めたい気持ちは、どれくらい様子を見るべきですか?
明確な期限はありませんが、環境を何も変えずに我慢し続ける期間を長く取りすぎるのはおすすめできません。夜勤調整や相談、休養など、できる範囲の対処を行っても状態が改善しない場合は、「まだ様子を見る」ではなく、選択肢そのものを見直す段階に入っている可能性があります。
重要なのは時間の長さではなく、何を試して、何が変わらなかったのかを整理できているかどうかです。
まとめ|「辞めたい」と感じた自分を責めなくていい

ここまで読み進めてくださったあなたは、すでに「辞めたい=弱い」という思い込みから一歩抜け出しています。看護師が辞めたいと感じるのは、努力不足ではなく環境と負荷の問題であることは、筆者が行ってきた個別ヒアリングや、記事内で整理した回答傾向(要約)からも一貫して見えています。
それでも多くの人が自分を責めてしまうのは、責任感が強く、周囲を優先してきた証拠でもあります。
重要なのは、「今すぐ辞めるかどうか」を決めることではありません。自分がどの段階にいるのかを正確に把握し、選択肢を整理することです。続けることで回復できる状態なのか、休む・異動が現実的なのか、それとも環境そのものを変えるべきなのか。この判断を誤らないためには、感情ではなく構造を見る視点が欠かせません。
筆者がこれまでに確認してきた中でも、「もっと早く環境を変えればよかった」と後悔する人は多く見られました。一方で、「焦らず整理したことで、自分に合う働き方を選べた」という声も確実に存在します。辞めたい気持ちは、あなたを壊すためのものではなく、守るためのサインです。そのサインを無視せず、しかし急がず、今の状態に合った一歩を選んでください。
この記事が、あなたが自分を責める思考から離れ、後悔しにくい判断をするための材料になれば幸いです。
「辞めたい」と感じている段階で、すでに十分に頑張っています。まずは“決断”ではなく“整理”から始めてください。
筆者プロフィール
看護師転職メディア編集長/看護業界取材歴5年。これまでに現役・元看護師への個別ヒアリングを300名以上実施。急性期・慢性期・回復期・クリニック・訪問看護など幅広い現場の実情を取材し、感情論ではなく「後悔しにくい判断軸」の言語化を専門としている。

